こんにちは!連日の小論文チャレンジです。今回はとてもユニークな問題です。
愛知医科大の小論文はいつもトリッキーで面白いので、よろしければこれもどうぞ。ストーリーを創作する問題です。 pic.twitter.com/QotNZVxXOD
— お湯 (@aaiiyudayo) November 18, 2019
ではどうぞ!
その学生は妖精に願った。「臓器を複製する技術を確立させてほしい。」と。彼女には誰かを犠牲にして自分だけが利益を得るような発想はなかった。もちろん、医学部に通う彼女にとって、学費などを工面する絶好の機会でもあったわけだが、彼女は毅然とその誘惑を断ち切った。
彼女は大学から帰る途中、普段なら見向きもしない古びた古道具屋の前で立ち止まった。その入り口付近においてある古びた壺、若者の部屋にはおよそ似つかわしくない趣のものだった。彼女は無意識にその壺を手に取った。不意に幼いころの記憶が鮮明によみがえる。病室の窓際に花が活けてある。母が毎日、色とりどりの花を活けてくれた。幼いころの彼女はその様子を見るのが楽しみで、その花瓶を「魔法の壺」と呼んでいた。
彼女は幼いころに心臓移植を受けている。長き入院生活のうちに運よくドナーが見つかり、今は普通の暮らしが送れている。一方で、臓器を提供してくれた方、そしてそのご家族に対して申し訳ないという気持ちは少なからず持ち続けていた。彼女は他人の命をいただいて生きているとも言えるのである。この気持ちを払拭するために彼女は医学の道を志したのだ。
何の犠牲も払うことなく、人々の命を助けたい。それが彼女の偽らざる思いである。そう、そのためなら彼女はどんなことでもする。その覚悟をもって、妖精へ強く訴えた。(564字)